2013/12/17

青空読書 03「姪子」伊藤左千夫

青空文庫:「姪子」伊藤左千夫

伊藤左千夫というと「民さんは野菊のような人だ」でおなじみの「野菊の墓」の作者、日本近代文学史上、もっとも作風と顔立ちがマッチしていない作家の地位を梶井基次郎と争ってる人(筆者脳内調べ)。「野菊の墓」は読んでないけど、中学だか高校の頃に松田聖子主演の映画を観に行ったことがある。もっとも目当ては併映の真田広之主演の「吼えろ鉄拳」の方だったが。

今回読んでみた「姪子」は初出が1909年9月の「アララギ」で、ほぼ全編、語り手である主人公の男の方言によるモノローグで構成された作品。伊藤左千夫の故郷である千葉の方言だろうか。内容は、初老の語り手が夏の早朝、鍛冶屋へ鎌を買いに行き、その帰りにふと思いついて姪子夫婦の家に寄るという話。道中で出会う健気な娘、鍛冶屋の兼公、かつてはいろいろ騒動を起こしたりしたものの今ではすっかり良い夫婦となった姪子とその夫。語り手も含めて登場人物が皆善良で清々しい。

方言で書かれた文章も、独特のリズムがあって読んでいて心地良い。これはちょっとした拾い物だった。

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