2013/12/16

青空読書 02「新婚旅行」正宗白鳥

青空文庫:「新婚旅行」正宗白鳥

正宗白鳥というと大正時代から昭和の半ばにかけて活動していた自然主義文学の作家で、著作を読んだ記憶はないし、代表作とされる「何処へ」や「入江のほとり」といったタイトルを聞いてもピンとこない。深沢七郎を評価し彼にとっての師匠ともいえる存在だった人で、深沢七郎の文章にちょくちょく名前の出てくる人という印象がほとんど。

今回、読んでみた「新婚旅行」は初出が1926年の「中央公論」で「新婚旅行」と「カルモチン」と題された2つのエピソードからなる作品。「新婚旅行」はタイトル通り、新婚旅行中の若いカップルの電車内での情景を描いたもの、「カルモチン」は歳の離れた妹と温泉宿へ神経衰弱の療養にやってきた女性の話で、どちらも明確な物語はなく、小説というよりスケッチといった方が近い作品。「新婚旅行」は新婚夫婦や他の乗客らのダイアローグが主体で、「カルモチン」は主人公である女性のモノローグが主体という対照的な構造になっている。「カルモチン」の主人公のグダグダブツクサ文句ばかり言ってる感じは今も昔も変わらずこういう人いるよねという感じ。

「新婚旅行」の乗客らの

「彼奴變な奴だね。」「新婚旅行か知ら。」「なあに、カツフヱー女か、丸ビル女だらう。」「どちらもいやに澄ましてやがる、當世の若い者にやかなはない。」

というくだりが面白い。

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