2013/12/12

青空読書 01「鳥獣剥製所」富永太郎

青空文庫:鳥獣剥製所 - 富永太郎

最近、あまり本を読むまとまった時間がなかなかとれないので、青空文庫で公開されてるちょっとした空き時間で読み終えてしまえるような短い作品を読んでいくことにした。

とりあえず1回目はタイトルが目にとまった富永太郎の「鳥獣剥製所」を読んでみた。富永太郎という人はまったく知らなかったが大正時代の画家兼詩人とのこと。画家としては川端龍子の門下で、中原中也などとも親交があったらしい。代表作はよく判らない、肺病を患い1925年に24歳の若さで死んでいる。

「鳥獣剥製所」は1925年に同人誌「山繭」の第3号に掲載されたのが初出。剥製の製作所を訪れた男が見る幻想を描いた散文詩。

私は、私が、鮮かな、または、朧ろな光と影との沸騰の中を潜つて、私の歳月を航海して来た間、つねに、かの女らが私の燈台であつたことを思ひ出した。私は、かの女らが、或るものは濃緑色の霧に脳漿のあひまあひまを冒されて死んでしまつたり、或るものは手術台から手術台へと移つた後に、爆竹が夜の虹のやうに栄える都会の中で、青い静脈の見える腕を舗石の上に延ばして斃死したり、または、かの女らが一人一人発見した、暗い、跡づけがたい道を通つて、大都会や小都会の波の中へ没してしまつたことを思ひ出した。殊に、私が弱くされた肉体を曳いて、この世界の縁辺を歩んでゐるやうに感じ出してこのかた、かの女らは、私の載つてゐるのとはちがつた平面の上に在つて(それが私の上にあるのか、下にあるのか、私は知ることが出来ない)、つねにその不動の眼を私の方へ送つてゐたことを思ひ出した。

とか、ちょっとグロテスクな表現が印象に残った。

Wikipedia : 富永太郎

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