2014/01/18

「青い鱗と砂の街 1巻」小森羊仔

「シリウスと繭」の小森羊仔の新作。

父と二人、海辺の街にある母の実家へ引っ越してきた少女時子。彼女は幼いころこの海で人魚の少年に助けられた記憶があって…… という話。

1巻の時点では引っ越したばかり主人公の日常描写がメインではあるものの、失踪中の母や、主人公が海で出会った少年、鳴海くんの海に消えた兄など、長閑さの中にも、この先の物語展開に大きく関わってきそうな不穏な気配もあって、この物語が帯の惹句にある「海辺の街での少女の成長期」であるとすれば、それは相当苦い経験を伴うものなのではないかと予感させる。

細い描線で単純化された人物と、比較的緻密に書き込まれた背景、多用されるインサートカットが印象的で、かなりゆっくりとしたテンポで進行していくのが気持ち良い。コマ割りはけっこう複雑だけど、だからといって読みにくいという感じはない。前作「シリウスと繭」は雑誌でしか読んでなかったのであまり注意深く読んではなかったのだけれど、今回単行本でちゃんと読んでみて巧い作家であることを確信した。これが長編2作目なのだから驚く。最近、単純に絵が上手い下手とかではなく、漫画としての表現が巧みな漫画家がたくさん出てきてすごい時代になったもんだなと思う。

僕の観測範囲が狭いだけなのかもしれないが、小森羊仔はもっと話題になっても良い漫画家だと思う。

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