2014/01/09

青空読書 08 「薬」魯迅 (井上紅梅訳)

「薬」魯迅

20世紀初頭の中国の作家、魯迅の「薬」を読んだ。読むのは今回初めてでなく過去に何回か読んでる作品。1919年に書かれた短編で、前半は病床の息子のために死刑囚の血を染み込ませた人血饅頭を買い求め与える老夫婦のエピソード、後半は老母が介護の甲斐なく死んだ息子の墓参りに行くと、死刑囚の墓に紅白の花が咲いているのを見つけるというエピソードの二部構成になっている。

人血饅頭は全近代的な価値観の象徴で、それを盲信する老夫婦は介護の甲斐なく結局、息子を失ってしまう。死刑囚は革命家で志半ばに倒れたその墓に花が咲くというのは判りやす過ぎ!と思わないでもないが、何故か花が咲いたり、最後に思わせぶりに登場する鴉とか、オカルト的要素が入り込んでくるのは、革命家もまた前近代的な価値観から脱しきれていないということなのか、あるいは革命家の墓の前で泣く母もまた前近代的な価値観の主であるということなのか?

ところで、この作品に登場する処刑された革命家のモデルとされるのが、秋瑾という清朝末期の女性革命家で、武田泰淳がこの人をモデルに「秋風秋雨人を愁殺す」という作品を書いているとのこと。気になる。

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